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伊藤さん,ISM研究会の皆さん,今井です。
BS放送の“ハローニッポン”を見ました。ビデオにも録りました。伊藤さん
の説明が予めあったので,今度は事情を理解することはなんとかできました。
いや,クライアントは大変なお方ですね〜。
番組の内容は次の通りです。──フィリピン出身の佐々木さんは,オーバー
ステイの在日フィリピン人母親たちに“子供を学校に入れるように”と奨める
活動をしている(番組はこの佐々木さんの視点で作られている)。本日相談に
来たAさんには日本人男性との間に,上から11歳,9歳,8歳の娘がいる(伊藤
さんの“[ism-topics.125] 10月21日(木)テレビ放送のお知らせ”,
1999/10/19 12:01によると,このほかにフィリピン人男性との間に4人の子供
がいるようだが,番組ではこのことには触れられていない)。彼女たちはいず
れも無国籍状態(フィリピン国籍さえもっていない──つまり社会的には地球
上のどこにも存在していない。つまりおよそcitizenではない)であり,義務
教育就学年齢に達しているのにも拘わらず学校には行かずに,家の中でぶらぶ
らしている。但し,11歳の長女が市販のドリルを買ってきて,妹たちに勉強を
教えてはいる。長女の将来の夢は医者になるということだ(これがドラマのよ
うなフィクションであれば,“義務教育も終えずに医者になれるわけがねーだ
ろ”と突っ込んでいるところです)。彼女たち(特に長女)は学校に行きたい
と願っている。
そこで,佐々木さんはJFCネットワークとも相談した結果,取り敢えずフィ
リピン大使館に届け出てフィリピン国籍を取得させ,その後市役所に相談して
公立学校に入れさせるように,フィリピン人母親Aさんに勧めた。市役所職員
によると,市の教育委員会は親がオーバーステイだからと言ってそのことを入
管にチクらないとのことである。こうして,なんとか,彼女たちは居住自治体
の公立学校に入ることができそうである。──まだ一度しかビデオを見ていな
いから,勘違いもあるかもしれません。例によって例のごとく,訂正があれば
お願いいたします。>>伊藤さん
俺の感想は次の通りです。──佐々木さんの視点で作られていること,入管
行政上の問題点には触れられていないこと,父親のことには触れられていない
こともあって,番組からは,“無責任な母親”という印象を受けました。実際
にまた,日本人父親の問題を入れて考えてみても,いずれにせよやはりこの両
親はかなり無責任だと思います。
で,そういう個人の問題を越えて社会の問題に目を移すと,もう日本の入管
行政のダブルスタンダード──安価で便利な(人件費コストが余剰になれば真
っ先に首切りすることができる)移民労働力に頼っておきながら,国籍(ここ
では同時にcitizenship)取得の条件が厳しすぎる──が限界に来ているのは
間違いありません(入管行政上の問題については,番組は極力触れないように
努めていたようです)。もう既にトルコ人問題が発生しているわけです。今後
は日本でも移民──長期滞在者を含む──受入派と移民排除派との闘争が激化
するでしょう。世界市場の形成(その裏面は──いや,裏面ではなく,それが
直接的に含んでいるものは──,世界的な雇用安定,世界的な経済計画です)
という観点からは,これは左右の政治闘争の柱の一つになるべき重大な闘争だ
と思います。