本文

 ISM研究会の皆さん,今井です。これは先週に行った講義の報告です。先週
はかなり忙しかったので,ここにアップしませんでした。

 ようやく今日,手形・小切手についての講義をやることができました。手
形・小切手は現代人の基礎知識なので,きちんと学生に知っておいて欲しいの
ですが,難しいですね,なにしろ学生は手形なんて見たことがない。まぁ,教
えている俺からして,手形帳なんて持ってるわけがない(笑)。昔は月賦販売
なんかでは消費者もマル専を使っていたようですが,俺も学生もそんなの見た
ことがない。仕方がないから来週は岸辺シローの話から始めましょうか。

 大東文化大の山本孝則さんなんか,“青木雄二の『ナニワ金融道』,ありゃ
読んで役に立つよ”なんて言ってましたが,いやしくもマルクス経済学の教員
が講義をする以上,あんなもんよりは役に立つものができなければ,意味があ
りません。学生が社会人として常識を持つためには,“狡賢くなりましょう”
ということを知るだけではダメです。“狡賢くならざるを得ないのはどうして
なのか”ということまで知って初めて,狡賢さの真っ只中で(つまり狡賢さか
ら逃げるのでもなく,かと言って守銭奴になるのでもなく)狡賢さを相対化す
ることもできるってもんです。序でに言うと,それこそが真の革命教育ってぇ
もんです。

 さてさて,工学部の学生があまり細かいことを知っても仕方がありません。
もちろん,多少は細かいことも教えるのですが,大枠については,ここでは,
俺としては,(1)信用は単純商品流通に外面的にではなく,正に単純流通の真
っ只中で,自然生的に発生する基礎的な関係であるということ(高利貸しなん
ざ信用の欠如の表現であるということ,そして銀行制度のような最高の人為的
装置も所詮は,このような素朴な基礎から免れていないということ),(2)信
用は客観的な関係であるということ(=物象化の真っ只中では,人柄が信頼さ
れるのではなく,財布が信用されるということ)──こういうことを理解して
もらえれば十分ではないかと。