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きょう「東海大事故の分析と今後」という集会に行ってきました(主催:たんぽ
ぽ舎・市民エネルギー研究所)。報告者は、槌田敦氏(名城大)、小林圭二氏 (京大)、
小泉好延氏(東大アイソトープ研)、相沢一正氏(東海住民)、山崎久隆氏 (たんぽ
ぽ舎)でした。
先着80名というので少し早めに行ったら、会場が開いてませんでした。主催者
のスタッフは時刻ぎりぎりに来て参加費徴収に追われていたので、なぜか僕が机
や座布団を出すのを手伝ったり、照明のトラブルに対処したりしました。そのせ
いで僕はスタッフと勘違いされて、問い合わせを受けたりマイクを渡されたりし
て困惑しましたが、本物のスタッフ諸氏は全く気にせずパンフの宣伝販売にいそ
しんでおりました。
技術的な話を報告者が手分けして解説していて、講義を聴いてるような感じで
した。専門用語が多くてよく分からなかったですが、ぼくが聞いたかぎりでは次
のような話でした。
・臨界とは核分裂数が一定で持続する状態のことだが、臨界には「遅発臨界」
と「即発臨界」とがある。
遅発臨界は、核分裂から直接出る「即発中性子」と、死の灰から出る「遅発中
性子」の合計が、漏洩などによる中性子の消滅数と釣り合っている状態。このば
あい、増加速度の遅い遅発中性子の範囲で、制御棒などで制御可能である。
即発臨界のばあいは、即発中性子の発生数だけで消滅数に達するか上回ってし
まう。即発中性子は臨界をこえると指数間数的に増える(0.1秒後に10万倍になる)。
青い光が出るのはこの状態であり、業界用語で「暴走する」とは即発臨界のこと
を言っているようだ。
決死隊が沈殿槽のまわりの水を抜いたのは漏洩数を増やして臨界が止まるのを
期待したためだが、バクチのようなもので、「超臨界」(この説明はなかった)
に達する可能性もあった。
・JCOの施設は、低濃縮ウラン用を中濃縮に転用することを最初から考えて作っ
てある。ウラン2.4kgが限度なのに容器は100リットル入ってしまう。ウランは低
濃縮も中濃縮も見た目は変わらない。この施設・手順書を許可した安全委と、
JCOの能力を見極める責任のある動燃[サイクル機構]の責任は重大だ。
・中濃縮ウランを液体状態で供給するということ自体がおかしい。動燃と(
JCOの親会社の)住友金属とのしがらみが感じられる。本来の目的は固体なのに、
もう一回液体にする意味が不明だ。この点の新聞報道は二転三転している。
・臨界は9/30の午前10時から10/1の午前4〜6時までずっと持続している。「再
臨界」ではなく、臨界の持続である。科技庁は、臨界はすぐに止まるという先入
見と、途中まで未計測のデータをゼロと勘違いして誤解しており、お粗末だ。こ
のため臨界中に多くの人が無防備に被曝することになった。
・放射能汚染は細く西に向かっている。マスコミが北に汚染と誤解しているの
は、門部測定所の位置をJCOの北東と誤解したのがもとになっている。JCOのすぐ
西には施設外の住宅地が広がっている。
・[γ線の]モニタリング値の上昇は降雨との相関があるが、それだけではな
い。希ガスやヨウ素133などの流出に反応したものと見られる。JCOの南20km(屋
内避難地域の外)の大洗にも希ガス類が流れている。
・昨日のNHK特集で“JCOの中性子モニターが午前6時にゼロを計測”と言ってい
たが、なぜ今頃こんなデータが出るのか。しかも、臨界が終わった頃のデータし
か出ていない。それ以前に敷地内の中性子が計測されていたのか、作業中に取り
付けたのか不明だ。
・公開されているデータからウラン0.5gが燃えたと計算できるが、これにもと
づいて土壌中のナトリウム24の生成量を計算すると、公表の測定値とほぼ合致す
るので、この計算は信頼できると考えられる。
これにもとづき、人体内のナトリウムが中性子によって放射化した量を計算す
ると、周辺ほぼ400メートル以内で(放射線作業従事者以外の)被ばく限度の1ミ
リシーベルトを上回ってしまうことになる。屋外避難が周辺350メートル以内でし
かなかったのは非常に問題で、限度以上に被曝した住民が大勢いると思われる。
また、敷地内で4ミリシーベルト出ていたから、350メートルではダメなのは、
能力があればすぐに分かったはずだ。
・社民党調査団が試料採取したJCO敷地内の放射能濃度の暫定値は、転換棟のす
ぐ北側で採取した試料からはナトリウム24が174696ベクレル/kg、半減期5年のコ
バルト60が7.7ベクレル/kgと凄まじい値が出ている。建物は閉鎖・立入禁止にす
べきだ。土壌汚染は地中深く、また風による飛散が問題で、早急にビニールでふ
さぐなどの対策をしなければならない。この建物は「除染」どころではなく、解
体しなければならない。だが解体の仕方がむずかしい。コンクリートもユーロピ
ウムなどが放射化している。
・研究者の測定では周辺を網羅的に調査することはとてもできない。科技庁は
メッシュデータを持っているが「まだ整理出来ていないので公表できない」と逃
げている。
・周辺350〜500メートルの人たちはホールボディ検査を早急に受けるべきだ(っ
た)。時間が経ってからでは内部被曝の証拠がつかめない。1ミリシーベルトを越
えて一般人が被曝したのは法律違反であり、補償問題が起こってくる。
・原子力安全委の助言組織メンバーは、住田氏1人を除けば紙とキーボードで
仕事してる人ばかりで判断能力がない。それに対して、研究者たちは事故直後か
ら公開のインターネットをつうじてデータや計算結果のやりとりをしている。し
かし事故後時間が経って、自己防衛的になりつつあると感じている。
・動燃再処理工場でも溶解槽の検知器異常を放置していた。バケツと違わない
性質の話だ。科技庁はこれを放置していた。また科技庁はJCOを回っている(回っ
てないことになってるが)。
・消防署には放射能防護服もサーベイメーターもある。だが東海村の防災訓練
では雨ガッパ程度しか着ない。また訓練自体、91年からやってないのも問題だ。
・自衛隊の化学防護隊はもともとやる気がなかったのであれだけしか出てこな
かったが、ほんらいは大挙して県道を封鎖し、検問して除染チェックする役割を
もっている。だからラインが引かれる前に逃げなければならない。今回は(出る
のを)止めてなかったようだ。
・現場周辺にはまだヨウ素131が残っている。チェルノブイリのときに各地の市
民団体が購入した測定器で調べられるはずだが、もうじき計測不能になってしま
う。政府にも対応能力が無かったが、NGOの側もダメだった。NGOの側で日常的な
防災体制をもち、このような事態のときには計測や情報提供が迅速にできるよう
に準備しておかなければならない。
というわけで、実務能力ある体制参加型をめざす市民運動の実態を見れた集会
ではありました。
さいきん槌田氏は、co2問題キャンペーンは原発産業の陰謀だと言ったり、温暖
化より寒冷化のほうが問題だとか、温暖化すれば寒い所で農業できるから困らな
いと言ったり、ちょっと電波入ってきてるような気がするのですが、見るかぎり
では人の良さそうな爺さんでした。