本文
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ラ・マン〜廃人〜
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主題歌:松田聖子『ブッこわれて,廃jing』
♪ブッこわれて,廃人〜
♪おもちゃじゃないの,廃人〜
♪無理を突き通して〜
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第二回 怒濤編
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なんてこったい,彼女の心臓が止まってしまった! 俺はジェニーを揺さぶ
ってみたが,彼女はうんともすんとも言わない。
そりゃぁ,俺は酷い男だ。君にカバーさえ着せてやらず,丸裸のまま放置し
ていた。激情に任せて,君にケリをブチ込んだことも二度や三度ではない。そ
うさ,俺は最低の変態野郎だ。
でも,俺たち,それなりにうまくやってたじゃないか。何故だ,何故,俺を
残して逝っちまったんだ。
ファンの音がしないことから,とにかく電源ユニットが故障したことはわか
った。問題はマザー,メモリ,CPUがショートしていないかだ。
俺は電源ユニット,メモリ・CPU付きのマザーボードをもって,ジャンクシ
ョップに飛び込んだ。FDD,CD-Romドライブなんてのは速攻買い直せばいいん
だし,Zipドライブなんてのはなけりゃないで当座,困らない。HDDはちょいと
心配だったが,俺様の誇るエロ・コレクションをジャンクショップごときに公
開するつもりはない。それに重要なデータは,HDDを付け替える直前にバック
アップしていたから,その点では安心であった。
私に応対したのは,ジャンキー店員ではなく,爽やか店員だった。
「調査には3日から1週間ほどかかりますが」
なんだと〜! 1週間? 電源ユニットがブッ壊れてるのはわかってるんだ
よ。まともな電源ユニットに,マザーボード繋いでマザーボードが壊れてない
かチェックしてくれたらいいんだよ! それに1週間だと〜? 馬鹿もたいがい
にしやがれ。
俺は栄養ドリンクと称する飲むに値しない黄色い液体の代わりにたっぷりの
トルエンを注ぎ込んだオロナミンCのボトルを鼻に当て,口からはハッシッシ
ーの煙を吹き,腕にある注射針の跡を見せながら言った。
「俺ぁなぁ〜,人を殺すのなんか,なーんとも思っちゃいねぇーんだ。イッヒ
ッヒッヒ,ゲヒョー,クエクエ」
爽やか店員は親切にも,──
「はぅ,わ,わ,わかりました。なるべく早く調べてみますぅ〜」
とおっしゃってくださった。
私が家に帰って,1時間もしないうちに,午後6時20分ごろ,ジャンクショッ
プの爽やか店員から電話がかかってきた。
「どうやら壊れているのは電源ユニットだけのようです」
「ヨッシャー,今すぐ電源ユニット買いに行くぜ,ウッヒョー」
「お,お,お客様,本日は6時30分で閉店でございますぅ〜」
よほど“それがどうした,俺様は今から5分後に行くぜ”と言ってやろうかと
思ったが,気分があまりにも良かったので,爽やか店員の残業を増やさないよ
うに気を付けた。
「よーし,明日,朝イチで行くぜ,ウッヒッヒ,ハァハァハァ」